涙と魚の相関関係/吉田ぐんじょう
 

錯綜している視神経の
からまりあった編み目の間に
ちいさい魚が
かかっている

つめたいつめで
そっとつまんで
涙腺の中へ
放してやろう
水草があれば尚いいが
涙腺の底には
水草は無くて
代わりに
いくつもの
うすあおい硝子片が
あるように思う

魚はそこへ棲むだろう
気泡を吐いて踊るのだ
それはきっと夢のように
愉快ですこし
痛いだろう
戻る   Point(16)