ミューズは夜恐ろしく冷ややかな忠告を授ける/きりえしふみ
例え明日からオンボロの衣服をこの身に纏っても
「あら、大変」
私のミューズは慌てふためく事などなく
世にも麗しいイメージで 私を飾り立てて下さる
なので 私はボロを着込んでも
残り少ない白粉、叩(はた)いても
「あら、大変」
の彼女の一言に広がる イメージの中の豪奢な衣装の淑女・・・・・・それが私
だから私は決して 真実貧しさを知る者にはなりえない
心揺さ振る 美辞麗句……とは言え 血の通う命の歌が
ころころと 宙返りしながら
落ち込もうとする私の この尖った爪先から 立ち現れるので
……立ち現れて 部屋中に立ち込めて行くので
私の目と心は 一文なしになろうと いっそ
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