霜月/銀猫
黄昏時には不意をついて
冬が何処からか現れ
桜の枝で褐色になった枯れ葉と
わたしのこころを繋いでしまう
ポケットに入れた手が
ほんのりと寂しさに温まる頃
去年届いた便りの
名前が消えかけていることを知る
十一月には
行方知れずの恋の名残りが似合う
誕生日の近いあなたに
伝えたかったことは
陽だまりの温度や
凛と咲く冬薔薇の匂いではなく
ただ同じ風邪にわたしも悩まされていると
そんな他愛もないこと
十一月には
毛布の温もりや
朝の窓硝子の雫より
きん、と痛い闇が似合っている
闇はすっかり冬を纏っていて
重ね着したこころの奥処を
許してくれるものだ
十一月には
紅や白無垢
山茶花の散る闇
はらりと揺らぎ
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