写真集を開く/光 七清
 
世界のどこかで
茶色い皮膚と黒い目の子供が
今日も泣く
たくさん泣く
日本のどこかでもきっと、
黄色い皮膚で黒い目の子供が
わんわんと大声で泣いている

どちらがどうというわけではないんだ
天秤が、ものさしが
コンパスが問題というわけでもない
地球も車輪も廻っているし
南極極海流だって廻っている
今日もぐるんぐるんと四十度の角度で
調査船を傾かせているかもしれないよ

そういえば君が今日飲んだコーヒーの出身は
ぼくが昨日発った空港の近くらしいね
でも、ぼくは物乞いにはあわなかったよ
コーヒーをすすりながら君は
ホームレスに時計を取られたと苦笑いした
どうせならストリートチルドレンにあげたかったよ
でも君、親の側は物乞いのために子供の手を切ってしまったりするらしいじゃないか
それでもさ、汚いおじさんより、可愛い子供にあげたいと思わないか?
ああ、実際はそうだろうな

よくある小さな世間話だ

ぼくは写真集を閉じると
十五時四八分発の急行電車に乗るために
品川駅へ向かった

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