つばくろ/ピクルス
 

いつもとは違う道を帰った日の彼女
もう歩けなくなって
駐車場の水溜まりに降る雨の波紋を見ていた
つめたく完璧な丸を描いて
にびいろの波紋は静かな口調で責めるから聞いてしまう
そうだね幾つもの波紋を通り抜けて
私達うまいことやったはず
なのに
彼女は催眠術にかかったみたいに
いつまでもいつまでも見ていた

特売日に怒ったような顔で叩くレジ娘
独りの時は、どんな顔をしてるの
少し飽きはじめた売れ残りのパンを
うれしげにかなしげにちぎっては
諦めながら池の鴨に放る
群れは
修羅のようだ
なにか云いかけて
また四肢を縮めた

信じること
傘をさしたなら雨には
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