忘却の深層より?東京/前田ふむふむ
 
聡明な森が、すべて枯れた日――
言葉を束ねる父のきつい眼差しのなかを、
滾々とみずは流れる。

父は、あのみずのおとのむこうから、やってきて、
やがて、むこうに帰っていったのだ。

聴こえるような気がする。

・・・・・・・
・・・・・・・

遠い声を灯して、
飛行機雲が、群れる冬空をよこぎる。
法事のもえあがる礼節を裂いて、
笑い声が、父の足跡を飾る。
なごやかな声が、奥ゆきある空に弾けて。

東京の早過ぎる寒椿がゆれる、乾いた空の、
こんなにも晴れた、穏やかな日は、
雨たちよ。
滝のように、降りそそげ。

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