忘却の深層より?東京/前田ふむふむ
 
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ホームの後ろに錆びた茶色の線路があります。
線路の枕木は腐りかけ、
雑草が点々と生えています。
線路は使われなくなってどれくらいがたつのでしょう。
わたしは線路に耳を当ててみました。
過去の幼いわたしを乗せた通勤電車が
遥かに遠くで走っている気がする。

ああ、段々と耳の奥に見える、白い闇に遠ざかってゆく。

冬空の光をうけて線路はそこにあります。
たくさんの思い出を抱いて
もう取り外すことも忘れられている線路が。
ただあるだけの線路。
忘却されたものの死屍が敷いてある。

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白い手が、豊饒な東方の湿原に延びて、
硬い眼は
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