『ビフォア・ザ・レイン』/橘のの
 
 
 
 
 【#1 巡礼】


赤く

熱く灼けた砂に跪き


空と大地は
逆さまのまま


おまえは
まるで祈るかのように
うずくまり
彼方には陽と
境界線がゆれる



砂を握りしめ
震えながら
待っている


いま
この銃爪を



【#2 イブニング・ニウス】


晴れた日曜の
礼拝のさなか
奪われた妻と子の命が

夕方には一面に踊る


夫であり父であった男は
2人の亡骸を抱き
名を呼んだあと
行方は
依然として知れぬまま



すでに
車と銃はそこにない



 【#3 TOKYO】



もう
18時も過ぎれば
辺りはすっかり暗く



華やかに灯る街へと
雨は落ち


気の早いカロル、
イルミナータに紛れて


とおい国の銃声が
聞こえたような気がした



 。
  ο


雨はまだ
降りはじめたばかりで
 
 

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