全ては現実(ここ)にある/松本 卓也
 
ほらごらんよ
世間の片隅で小さく震え
聞こえない声で愚痴る子供が居て

ほらごらんよ
世界の中心で大げさに振る舞い
我侭を押し通す大人が居て

涙を流す術は無くしたなら
理想主義者が詠う芳香に酔って
甘美な夢の中で永遠に眠ればいい

生涯目覚めぬ灰色の夢だけが
与えてくれる安らかな楽園に逃げ込んで
やがて消え果てる自慰を繰り返す

答えを見つけた気になって
貪っている誰かの暮らし
泣くのはいつも より弱い誰か

路上に走る切れ端の上に立って
現実主義者が奏でた辛苦の歌
高らかに唄ってみせた

誰も傷つけたくないとか
誰の涙も見たくないとか
そんな
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