ある少女の独白/杉菜 晃
も失ってしまうような
気持ちで過ごしたわ
ママははじめに書いたように亡くなったわ
酸素吸入器をあてがわれて苦しい息をしていて
とても青年のことなんか話せなかった
誕生日に歌をプレゼントしてもらったなんて言ったら
娘の誕生祝どころか 何もしてやれずに
息を引き取ろうとしているママを
責めるような気もしたしね
ママは死んでしまったわ
まだ若くて とても綺麗な手をしていたのに
私はそれから
欠かさず毎日駅構内に行って
青年を待っているの
彼の顔なんかよくは覚えていないのに
どこか雰囲気が似ている人を見かけると
どきんとして その人の後ろを追いかけたりして
ギターを抱
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