ある少女の独白/杉菜 晃
 

ママが死んだの
私が高校を卒業して間もなく
ママが死んだの
ママと二人だけで生きてきたのに
そのママがこの世からいなくなってしまったの

ママはパパのことを私に教えてくれなかった
私の記憶に残らないほど遠い昔に別れたんだと思う
ママが死んでしまったとき
パパのことが頭をかすめたけれど
私にはもっと逢いたい人がいたので
どこかにいるパパのことはそれほど思わなかった
思い出そうにも
何も覚えていないんだものね
私が会いたいとひたすら願っている人は
これから書く 書かなければいられなかった人よ
母が亡くなる少し前のことなの
高校の卒業を二箇月後にした
風のある寒い
[次のページ]
戻る   Point(15)