「 あたしのあだしのくん、三。 」/PULL.
 
伝わるように、
もっと強く強く、
あだしのくんを抱きしめる。
だけど、
あたしのからだも冷たくなって、
あだしのくんと一緒に冷たくなって、
凍りついてゆく。


目がさめると、
もう朝になっていて、
あだしのくんも、
あたしも、
全身汗だくになっている。
あだしのくんは冷たくなくて、
いつものあだしのくんに戻っている。

あだしのくんは照れくさそうに、
「ありがとう。」
という。
あたしはあだしのくんの鼻を、
つまんでぺろり、
ひと舐めする。
あだしのくんがぐいっと、
あたしを引きよせる。
あたしとあだしのくんは、
また汗をかいて、
ひとつになる。

それから数日、
あたしのからだは冷たくなる。
からだの芯が冷えてしまったのだ。
あだしのくんは、
そんなあたしのからだを、
やさしく撫でて抱きしめて、
あたためてくれる。


あたしとあだしのくんは、
そんな夜を、
かさねている。












           了。


戻る   Point(20)