「 月宴。 」/PULL.
どこまでも夜を続けた。
どこまでも続く夜。
どこまでもまぐわい、
きりがない。
まぐわい。
続ける。
歩く。
月。
やがて夜がうすくなり、
夜平線の向こうが、
誰かに喰われ、
紅に染まる。
太陽が、
くる。
影のない夜のものたちは、
ようやく太陽に気づき、
悲鳴を上げ、
逃げ惑う。
逃げ遅れたものたちは、
地に磔にされ、
はじめての、
影を得て、
死ぬ。
宴の痕。
いくつもの焼け焦げた、
黒いそれが、
夜の通った痕。
ただひとつ。
旅人の影だけが、
永く延び、
続く。
どこまでも、
夜ごと歩く月を追い、
旅に出た。
月は夜ごと、
誰かに囓られるが、
その喰べ滓が、
空にてんてんと残るので、
月に迷うことはない。
了。
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