いのち(命)/輪橋 秀綺
 
命は、優しすぎる涙だ。
一粒、肌に触れると、
途端に僕はばらばらになってしまう。


命は、透きとおる歌だ。
僕の身体に沁み渡り、
細胞のひとつひとつがうるおいだす。


命は、無限に重い本だ。
一文字一文字の中に、
人々の幾重もの想いがあふれている。


命は、口どけする絵だ。
一粒、口中に含むと、
濃縮された感情がゆっくり踊りだす。


命は、他愛無き物語だ。

どんなにか語っても、まだ足りない。


僕もまた一人の人生作家として。
ひとつの命を護っている。
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