産業道路のコンバーチブル ★/atsuchan69
咽喉を刺激する大気、
サビて崩れる鋼鉄の、
強靭な幻が都市を支え
静かに腐食してゆく世界、
やがて酸性雨を降らせる雲が西の空にたなびいている
その曇天の真下、
複雑な曲線と直線の交差するハイウェイ、
装飾のかけらさえ見あたらない
肌もあらわなコンクリートの柱たちが幾千もつづく
あまねく全地を覆う瀝青の暗い景色に、
人はいない
心地よいエンジン音に吸い込まれてゆく息づかい
ボディの派手な紅緋の色とは裏腹に、
黒革のシートの鞣した獣の匂いが興奮を鎮める
疾走するメロディに満ちた快適な
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