愛の墓場/ロリータ℃。
 
ことで、しなやかな孤独へと姿を変える。
 ゆうべ私たちは抱き合い、眠るまで手を繋ぎあっていた。泣き出す準備はとうの昔から出来ているのに私はとても幸福な顔で、彼の頬にくちづけをした。目を細めた彼の顔に昔の面影が垣間見えた。私は彼の胸に顔を埋め、繋いだ手に力をこめた。
 だから目覚めて、私は驚いてしまう。


 まるで知らないひとみたい。


 朝がくるまで眠りこむ彼の顔も、今此処でコーヒーを飲んで窓の外を眺める私も全部全部過去から繋がっている筈なのに、知らない人に思えるのはどうしてだろう。
 無意識のうちにお腹を撫でる手も、胎動する子供にそっと話しかけたりするこの唇も、全部私のものなのに、映画を見ているように現実感がなくてとても困る。
 眠っている彼はまるで知らないひとのようだった。その知らない男を心から愛している自分に気づき、私は絶望して舌打ちをする。
 いつの間にか私たちはこんなにも、大人になってしまっていた。
 




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