無題/印刷屋
詩を書くからには、鬼面人を驚かす詩句を連ねて
インパクトの代数学を徹底したいもの。
ある一連が詩の全体を包含し、ある一行が連の全体を包含する。
ある一詩が世の詩の全体を反映し、それをある一音素が反映する。
「モナドに窓はない」の一句は、それ自体が世界の
真理を表現すると同時に、世界そのものと等値されうる。
そうした夢想家は、沢山いたが残念ながら
世界は世界として存在し続けている。
アレフはいまだ発見されていないのである。
探究心の旺盛な人間は、真理を発見しようと努める。
理論家たちは、真理を推論しようと試みる。
帰納法・演繹法は、それぞれ過去と未来に縛られすぎる。
パースという人は、アブダクションと言ったが
現在と格闘するのは、工夫に富んだ技術屋の仕事。
トンカン トンカン 家を建てる大工。
家を燃す火付け それを鎮める火消し。
世界に対して、遡及的でも前望的でもなく
世界の内=家で、制作に励む技術屋=詩人。
その試みは遊戯的とも言えるだろう。
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