ピラニア/「Y」
そう思うと、身の回りの物事が、すべて異様なことに思えてくるんだ。僕が採取してきた蝶を殺して標本をつくることもだ」
僕は、ついさっきまでは平静だった明の口調が、急に感情的なものに変化したことに驚いていた。明は自身の中に急に沸き起こった苛立ちを持て余しているように見えた。僕は明に言った。
「異様なことだというのは、僕にも分かる気がする。僕がピラニアを飼うのは、最初はとても綺麗だからだと自分では思っていた。手元に置いて毎日眺めていたいと思ったから飼いはじめたんだ。だけど、飼っているうちに、だんだん奇妙な気分になりはじめた。ただ単に綺麗なだけじゃなくて、それ以外のものも見え出してきたんだ。同時に、そ
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