ピラニア/「Y」
中を眺めていた。ピラニアを見ている最中に、それが僕の生まれる前からずっとそこに居て、これからもずっとそこに居続けるのではないか、という奇妙な妄念にとらわれることがしばしばあった。普段は僕の心の奥底に沈んでいるその妄念は、僕の心を穏やかで和らいだものにしてくれた。ドアにもたれながら、僕は再びそのことを考えていた。掌に残っていたマルチーズの体温が、すーっという音を立てて冷めていくような気がした。
食事を済ませた後、僕はピラニアに餌をやった。メダカと金魚が泳いでいる水槽から二尾のメダカを掬い、ピラニアの水槽の中に投じる。ピラニアはすぐに反応し、メダカを喰べた。喰べるというより吸い込むような感じだ。
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