足摺岬/印刷屋
なん百キロの 距離を越えて
私のこの想い とどけ
逢うことは季節より 貴重で
まっすぐな 交歓を許さない
不器用で 生半な身体と
しばしば黙り込む こわばる精神と
それでもなお 越えて
私 あなたの傍にいる
あなたは蝉になって 想い人の
背中にとり付くのだと いつか
聞かせてくれた ことがあったか
いまは 蝉すら絶え果てて
それでも なお越えて
あなた 私の傍に
いる
たった二行の詩句に 想いを
重ね あなたが形見に
残してくれた アドレスという
名のつながらない 通信回路を
それでもなお 越えて
戻る 編 削 Point(1)