浴 室/「Y」
 
の日は取引先も、多くが仕事納めであったので、納期督促の電話もさすがにすくなかった。私の仕事も片付いていた。だから、私は売り上げ日計更新のコンピュータ操作をわざと遅らせた。年内の残務処理をこなしているようなそぶりを見せて、掃除に加わらないようにするために。
 なにしろ体が動かなかった。フロアの中は十分に暖房が効いているが、全身の皮膚が悪寒に凝っているようだった。この時期には、時折こんな風に具合が悪くなる。Yシャツの生地が肌に触れた時のざらりとした感触に、まるでヤスリでも当てられたような嫌悪を覚え、体を動かすことさえ億劫になる。
 席を立ち、トイレへと向かう。薄暗い廊下を歩きながら深呼吸をした。頭
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