浴 室/「Y」
 
 その日は仕事納めだったので、午後4時を過ぎると、事務所の中で掃除をし出す者が現れはじめた。掃除をする者は時間の経過とともに増えていき、それと同時に躁ぎ気味の喧騒も広がっていった。もっとも、全員揃っても、せいぜい15人足らずの職場ではあるが。
 普段は出ずっぱりで会社に寄り付かない営業マンが、雑巾を片手に、「おい、マイペットどこだ?」などと声を出しながらフロアをうろつくのを横目に、私はデスクのモニタを眺めていた。涙腺が弱っているのだろうか、モニタの上を走る視線がぎこちなく、目を動かすと眼窩と角膜が染みる感じがする。睡眠不足のせいだと思うが、昨晩何時に寝たのかを思い出すことはできない。
 その日
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