おりて おりて/木立 悟
 



布をひらき 布を折り
隙間を残し さらに布を折り
ひとつの色に定まらぬ陽は
ひとつのうたをくちずさむ


暗がりの宙に浮かぶ音
変わりつづける一瞬を
意味とは異なる姿の方へ
まばゆく描いては消してゆく


灯と灯のはざまを
無の白と無の黒が交互につづき
曲がり角だけを失くしたまま
道はゆるやかに曲がりゆく


地のまぶしさに落ちる羽
穂先へ穂先へと横たわり
かつての居場所をうすく見つめる
音は離れ 蒼へ向かう


風の片方 午後の水
動かぬ川を動く曇
灰が灰を呼ぶ涙
指のはざまの声にまたたく


雨季を連れ去る
ひとつのからだ
くりかえしつらぬく
穂と羽の波


布は降りて 笛はつらなり
鈴は水と言葉に沈み
指はまたたきと語らいながら
あふれる色を織りはじめる











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