[ 冬 ]/渕崎。
冬の空気に触れた肌が
ぴりりと脳神経を刺激して
眠った脳を揺り起こす
冬の匂いはまだしないのに
悴む手先と吐く息が
これからの冬の訪れを静かに告げ
ひっそりと誰にもサヨナラを言わずに去っていった
あの秋の鮮やかな落葉を忘れさせる
雪は降るだろうか
川面には今年も鴨の親子が飛来し
春までの一期間を穏やかに過ごし
春の訪れに遠慮するように
また去っていくのだろうか
そうしてぐるりぐるりと季節は巡って
気付けばまた、
わたしはふっと冬の訪れの気配に身を竦ませ
悴む指先にそっと白く靄になる吐息を吹きかけ
かさかさと乾燥する肌をこすりつけ
冬の空を見上げるんだろう。
戻る 編 削 Point(1)