草原へ/
佐羽美乃利
モンゴルの草原へ
私は行ったことがない
そこにはきっと
私の母に似た
まるくあどけない顔の
少女がいるだろう
草は風に溺れ
風は蒼天を巡る
ゲルの暮らしの中で
羊料理を囲む人々の額に
牧神の末裔のしるしが
密やかな花のように刻まれ
凍える夜と
熱波の昼と
まぎれもない
アジアの民
私と同じ
黄色い皮膚と
煙水晶の瞳の
草原の一族が歌う国へ
私はまだ
行ったことがない
戻る
編
削
Point
(3)