草原へ/佐羽美乃利
 
モンゴルの草原へ
私は行ったことがない

そこにはきっと
私の母に似た
まるくあどけない顔の
少女がいるだろう

草は風に溺れ
風は蒼天を巡る

ゲルの暮らしの中で
羊料理を囲む人々の額に
牧神の末裔のしるしが
密やかな花のように刻まれ

凍える夜と
熱波の昼と

まぎれもない
アジアの民
私と同じ
黄色い皮膚と
煙水晶の瞳の

草原の一族が歌う国へ

私はまだ
行ったことがない










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