船と涙/水在らあらあ
 





              ―刺青


そこには船があって
ずっとずっと遠くで
何かを引きずりながら
航海を 続けている

そこには涙があって
ずっとずっと近くで
青空を映しながら
きらめいて 凍えて

くちづけを 運んでいる
それは左腕の 船
くちづけを 待っている
それはみぞおちの 涙

俺は水を知っているから
深く さみしい 水の流れを
その水がおまえの肌の下に流れてゆくから

迷うことはない 迷うことはないんだ
まっすぐに 真摯に 
森を抜けて 砂漠を越えて
おまえに 会いに行けばいい

傷は 洗われて
陽射しを浴びて かわいて
そういうことさ そういうことだぜ
もう 刻まれちまった

心臓と ばらと ナイフと

おまえの 名前と







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