ボート/プテラノドン
 
「風は手で漕ぐよりも速い。」
と聞いていたが、それよりも
はるか先を行っていた。
小川を下る空のボートは―
かつて、ルーレットに記された言葉のみを使って
死ぬまで日記を書いたという
狂人たちものだった。
たしかに彼らは、アリゾナに沈み
行方不明となった太陽を探しに出かけたまま
帰ってこなかった。悲劇のお膳立てするはずだった
ボートには、時々ナイチンゲールが羽を休める
ことがあるくらいで
今でも進路は定まらぬまま、
「さびしさは何よりもはやい。」


戻る   Point(5)