終戦/奥津 強
太陽が、浩々と照らしていた。心地よい晴れ具合の下に、喪服を着た葬列があった。棺はなく、代わりに僧侶が、数人の焼け爛れた顔の男達に抱かれていた。雲などない、明るい五月晴れの中で、僧侶の今際の言葉のような読経が、妙に男達を泣かすのであった。
しばらく、行くと、やはり顔の焼け爛れた、髪のない女がいた。女は猫を抱いていたが、猫は、腐って死んでいた。臭気の中、女は、頭上を見上げ、何か言った。
だが、何を言ったのかは分からないようだった。言語になっていないようで、喪服の葬列は、女の前で、軽く頭を下げると、身悶えする僧侶を抱いたまま、歩いていった。
やがて、軽い林に出た。林にはロープがぶら下がっており、何人かの先客がいた。女が駆けてこう言った。やっと聞き取れる声だった。女には、声帯がないようだった。
「終戦記念日なのね? 私達はやっと解放されるのね」
「貴女もなさい」と僧侶が言った。
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