「 たららま。 」/PULL.
、
ぐちょぐちょぐちょぐちょにした。
殻と白身と黄身とで描かれたそれは、
どんな絵よりも奇抜で混乱していた。
声がした。
振り返ると妹がいた。
「お姉ちゃん、
そこでなにしているの。」
妹は泣いていた。
ほら、
あんたもやってみなさいよ。
気持ちいいわよ。
足の裏で、
ぐちゃって。
卵がつぶれるの。
いやがる妹の手を取って、
卵の前に立たせる。
妹の手はひどく冷たくて、
冷蔵庫の中の卵よりも、
冷えていた。
ほらこうやるの。
ね、
簡単でしょ。
後ずさる妹の手を強く握り、
あたしはまたもう一個、
卵をつぶした。
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