そっと閉じる/霜天
 
遠く 遠く 遠く

それは恋に似た
恋で

スタートラインの踏切り方も
ペースの配分も
わからなかった頃の
記憶の欠片で


遠く 遠く 遠く

それは辿れない
距離で

振り返って眺める景色や
通り過ぎる人の顔に
繋がっている
想いの欠片で


遠く 遠く 遠く
そう それは
遠くのことで

花冷えのする街角で
佇んでいたあなたは
あなたを残していたので

懐かしさと
蘇ってきた感情とを
抱きしめながら

写真に収めるように
目を そっと閉じるのです


開きかけの桜が
誘うように揺れる
触れられぬ想いは
遠く 遠く 遠く
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