忘れられた本/葉leaf
 
買った記憶もないのに
本棚に入っている本というものがある

まるで私の目を盗んで狡猾に忍び込んできた
小動物か何かのようだ
そしてそれは
小動物となることで
本としての役割を
忘れてしまったかのように見える

その本を手にとってみる
私が手に取るまでにこの本は
天井裏を走り回り
木の根をかじり
雑多な昆虫を食べて来たに違いない
そして小動物として振舞うたびごとに
文字を一つ一つ落としてきたのだ
今ではきっと一つも文字が書かれていないに違いない

私はページを開く
すると細かい文字が
びっしり紙面を覆っていた
本は何も忘れていなかった
私はその本を忘れていたというのに
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