太陽が喋った/杉菜 晃
 
 おまえはこれから四丁目
五番地のY道場に行け そこで婦女子に空手を伝授せよ―
だって 復讐は神がするって さっき言ったじゃん
―復讐じゃない 護身のためだ―
太陽は言って 雲の中に隠れてしまった
急に冷え冷えとして 俺はぶるぶるっと身震いした
俺が打って変わって乱暴な口を利いたので
太陽め 苛めにかかったなと思った
寒さを防ぐために駆け足になって
その場所へ急いだ
Y道場につくと 婦女子たちが待っていて
―新しい指導者が来た―
と騒いだ
どうして新しい指導者だと分かったの
―だってさっき太陽が顔を出して そう言ったもの―
そうか 太陽はここへ来るために急いだので
急に姿を消したんだな
太陽が苛めたなどと考えたのが
恥ずかしくなって
よーし 護身術の伝授に及ぶぞ
今日から連日 休みなしだ ついてこられるか
―はーい 苛められっ子先生―
おしゃべりな太陽め そんなことまで話していたのか
照ったり曇ったり まったく落ち着きのない太陽だ





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