太陽が喋った/杉菜 晃
くだけだ
こらえてドアベルを鳴らす
Zはなかなか現れず
十年近い時が流れて
覗き窓が開く
そこに覗いているのは
熊の貌だ!
俺はたじたじとなって
ドアの前から逃れた
腰を抜かすほど動転して
ほうほうの体で街の広場に来ると
空を仰いだ
いつもの太陽が陽を降り注いでくる
だがいつもとは違って太陽が口を利いたのだ
―悪い奴はいつまでも悪い 悪者に復讐するのは神だ
それが神のさばきだ 悪者を矯正できるのも神だけだ
おまえが心を砕くことはない―
太陽は言って口をへの字に結んだ
俺は怒られた気がして しおらしくベンチに腰を下ろ
した
するとまた声がした
―
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