空が悲しくなると僕らはいつも/霜天
クラウン、という名前の店のある丘の上で。交互に鳥になる、ということを繰り返していた。こんなにも深い場所で息をするのは初めてで。どこまで昇っても底があることが分かった。にわかに、しん、と静まり返った街を抜けるには、僕らのどちらも、呼吸が足りなくて。爪先まで、爪先まで。縦に行く街、横に走る街、高さに連なり伸びていく街。全てを越えていくために、眠る。月を落せると信じていたから、いつか触れようと誓い合う。夢の際、山の肌。繋がるための手段として、月を落せると信じていたから。
いつか見た映画の、
覚えている、その台詞だけを繰り返す。
痛む耳で、その声だけを拾い上げる。
高いところは忘れようと、順番になった君が鳥を真似て、
言う。高いところは忘れよう、こんなにも秋色の、
空が満たされるための手段として、
僕らはこんなにも悲しくなれる。
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