ナルシスの帰還/三条麗菜
セイレーンから
私はあの人を
守らなければならなかった
でも
できなかった
私は
できなかった
私は
捨てられた
その時
あなたが帰ってきた
金色の髪をなびかせて
あなたが帰ってきた
輝く鏡の翼を羽ばたかせ
あなたが帰ってきてくれた
抱きしめて
力の限り
いつかのように
抱きしめて
空一面の星が
流れ星となって
この浜辺に叩きつけられ
砕けるまで
そして
あとに残った暗闇に
慰められて
私が深い眠りに
つくように
抱きしめて
おかえり
ナルシス
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