重複する世界/yukimura
いくつかの知識を失くしたために
それの侵入から逃れるプログラムを
組み立てられなくなった
僕は時々あなたと話しているつもりで
言葉を発していないことがある
あなたは僕を寡黙だと思っているが
僕は絶えずあなたと話していた
世界は重複している
そして 二つの円の重なる割合が
建ち並ぶビルの屋上で
浮力の費えた夕陽のように減少していく
与えられたものの少なさを疑わず
心が現実の少し内側で
有袋類の仔のように
静かに眠っていた時は 気付かなかったが
それは今新たな世界を獲得しようと
祭司に杖を振らせ 一羽の燕になり
鉄格子を激しく揺らしている
世界の乖離に恐
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)