エーロゾル/はらだまさる
夕食を食べ終えた革命家は
中国で批判され始めた魯迅を読みつつ、
その狂人と凡人の差異について暫し記憶を手繰り寄せるように、
かの英雄ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャをして
「狂気の沙汰だ」と罵るのは一体誰なのだろうか、
と中秋の宵闇にぶら下がった埃っぽい下弦の月を
一飲みにした雲が優雅に流れてる粗悪な空を滑らかにする、
湿気たクッキーのように疲労した近視の眼を閉じて、
窪んだ瞼を両手の指の腹でぐうと押さえながら
白と黒と白と黒の微細なツートーンに覆われた丘陵が
どこまでも遍く世界に浮かんでは明滅し、
落下する数々の光を追いかけて、
気仙沼のもどり鰹やロンドン塔のコモン・レイ
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