虹/
佐羽美乃利
僕の頭上にある雲は
世間の役に立つ人間になりたいと
思えば思うほど
鈍色に重く広がって行く
僕の胸底にある海は
誰かを喜ばせる人間でいたいと
願えば願うほど
昏く荒れて波立ってしまう
それで突然
悪党になることにした
自分のことしか考えない奴に
でも僕の脳髄に降る雨は
愛が愛を愛だけ愛こそと
わけのわからない呪文を
呟いては滴り落ちるので
僕は風邪をひき
遠い国へ行って虹を見たくなった
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