*追想*/知風
 
吸い上げて
自分ひとりだけ贅沢三昧

葉っぱの衣なんて野暮だと
柔らかい白絹に納まって
お高くとまってやがるのさ

儂は何度か説教してやったさ
自分の根っこで立てない奴は
ろくでなしのあばずれだって

あいつらてんでお構いなしで
涼しい顔して煙草を吹かしておったがね

だけど 古老には分かっていたのさ
あいつらだっていつまでも
美しくはいられない

すぐにやくざに捨てられて
泣きを見るがいいさと
儂は思っておったのだよ

だから驚いた

ある日突然
あいつらは雪が溶ける様に
すっかり消えてしまったのさ

みじめにしおれた花びらも
醜くねじれた枝も残さず
美しい記憶だけ残して

その潔さ
その誇り高さ

あいつらの消えた跡を眺めながら

あの美しくも儚い生き様を
見つめることが出来たこと

そして
それを誰かに語ることが出来ること

それだけでも
この死にぞこないのおいぼれが
死にぞこなってる価値があるって


儂はそう 思ったのじゃよ

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