ナイフを買ったよ、白い柄のナイフを買ったんだ。/虹村 凌
 
を含めて、
俺が考える幸せを掴む事が出来なかった人間が、
この世には、俺の他にもっといるのだと思った。
俺は、この世で一番不幸な人間なんかじゃない。
俺は乗り越えるべき壁を、どうにかこうにか乗り越えた、
ただの幸せものでしかない。

俺は、幸せなんだ。
俺は愛されている。
もし誰も俺を愛していなかったら、周りには誰もいないだろう。
そりゃ時々、自分自身がそこにいていいのか、必要な人間なのか、
邪魔じゃないのか、憎まれているんじゃないのか、嫌われているんじゃないか、
と不安になる事は年中あるけれど、
もしそれが真実なら、今の俺の周りには誰もいない筈だ。
同情で傍に居て呉れ
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