ナイフを買ったよ、白い柄のナイフを買ったんだ。/虹村 凌
ナイフを買った。昔から刃物が好きだった。
初めて持ったナイフは、オレンジ色の果物ナイフだった。
オレンジ色が嫌いで、テーピングテープを巻いて持ち歩いていた。
そいつは、誰も居ない剣道場の部室のドアに、
何度も何度も叩き付けられて、壊れてしまった。
剃刀は、今も実家の机の中で眠っているかも知れない。
ナイフを買ったのは、ただ単純に刃物が好きだからだ。
手首を切りたいとか、刺せば心臓に届く長さだとか、
そういう不純な動機じゃない、筈だ。うん。
何かを刺したい訳じゃない。
まぁ、治安が悪いので、護身用って意味も含めるのだけど。
誰も助けてくれないのだ。
今の世の中、誰も助けて
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