白い自転車(オラシオ・フェレール「白い自転車」より)/角田寿星
に笑顔を分けようと必死に頑張ってる
ちっぽけな少年の神様に
風の便りできいたんだ
町のあちこちで少年の神様をひっそりと見かけたって
あんな目にあってもどうして
この町を見捨てないのか分らなかったけど
この町にはまだ 深い痛みや憎しみや
暴力や嫉妬や悪意があふれていて
道ですれ違っても挨拶ひとつ交わせないけど
どれだけ心が豊かになったとしても
生きるかなしみは消えはしないけど
夕暮れのひとり 帰り道
花屋の前に 電柱の上に みんなの心のなかに
曲乗りをしてくるりと回る
白い彗星の自転車に乗った少年を探しているんだ
みんな
覚えているかい?
人間が好きで好きでたまらない
あんなにも健気な少年の神様を
今度会った時には もう間違えない
もう間違えたくない
ようこそぼくらの町へ ぼくらの心へ
白い自転車の少年の神様
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