逆流/葉leaf
 


西野はレストランでハンバーグとビールを頼んだ。

店員はまずビールを持ってきたが、ビールはグラスの半分までしか入っていなかった。そこで西野は店員に文句を言った。すると店員はこう答えた。
「いえ、ビールはグラスいっぱい存在しています。ただ、そのうちの半分が、何物かによって世界に現れるのを阻害されているだけに過ぎません。本当はグラスいっぱい分のビールが存在しているのです。」
西野は、本当は存在しているのなら仕方がないな、と納得した。

店員は次にハンバーグを持ってきたが、ハンバーグも半分しかなかったので、西野は文句を言った。
「いえ、ハンバーグはまるまる一個存在しています。ただ、そのうちの半分が、何物かによって世界に現れるのを阻害されているのです。」
そこで西野はまた納得した。

会計は千円だった。だが西野は五百円玉を一枚出しただけだった。そこで店員は文句を言った。すると西野はこう答えた。
「いえ、五百円玉は二枚存在しています。ただ、そのうちの一枚は、何物かによって世界に現れるのを阻害されているのです。」
店員は店長と相談した。店長は警察を呼んだ。


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