すみちゃんのセーター/吉田ぐんじょう
バイトだから
と言って切られた
後に残ったのは
通話時間三秒と云う画面表示
一体
何時から妹は
あんなにちゃんとした人になったのだろうか
わたしたちは
シャム双生児のようなものだと
思っていたのだが
切り離されたのだろうか
こんなにも徹底的に
セーターを嗅ぐと
わたしの臭いがついてしまっていた
ズボンにもパンツにも多分
わたしの体臭がついてしまっていた
帰り際にもっかい
ショーウィンドーを覗いた
一瞬妹がうつり
それから直ぐわたしに変わった
ぺそん、と云う感じのセーターは
今の季節には少し薄いのだろうか
上を向くと三回
くしゃみがでた
三回のくしゃみのうち三回目だけは
妹とそっくりな声だと思った
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