約束/深月アヤ
 
桜の咲くころ とあなたは言う
今年の桜は一人

花の一部になりたかった

春の容赦ない風に吹かれて
花の中に愚かに
その醜悪な姿を晒す


散るたびに香る
夜の吐息のような

誰もが意識を逸らせない
密やかな交わりのかそけき音

そんな桜の大樹の下で

花に同化する夢を見た


会わないことで
繰りかえされる言葉は

通り過ぎるだけの風と知っている
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