貝殻の内側で/霜天
貝殻の内側に仕舞われたような日々
僕らがいるのはそんな場所で
耳にあてるとざーざーと音がする
うっすらと開いた隙間からは
青い空と白い雲
明日っていうのはきっとあの白い塊で
かたちがあってかたちがない
時々降ってくるものを
拾い上げては積み上げている
それは歩道の端を歩くような感覚
手を広げて僕だけのバランス
空まで伸びた真っ直ぐなレール
バランスを崩しても平気だけど
転べばやっぱり痛いんだろう
そうやって積み上がる日々の上
僕は両手を広げながら
その先にある空の色を
左右へ揺れながら空想している
冷たい空気の朝日の世界
家から駅までの見慣れた道程
人も車もない道の端で手を広げた
僕を追い抜いていく風からは
やっぱりざーざーという音がした
今日も貝殻の内側で
ざーざーという音を聞きながら
隙間からのぞく空はやっぱり青くて
相変わらず雲はふわふわと白かった
戻る 編 削 Point(2)