四ツ花/Rin.
先に春を見た私
*
部屋には小さなサボテンが飼われていた
双葉の頃から、サボテンは知っている
でもこのサボテンは
黒い
棘がとっても多くて、足元は青かった
でもね
私は首をかしげたりしないよ
だってあなたはサボテンだから
あなたに棘が多いわけ
刺さらなくても分かるのは
私だからでしょうか
*
あのひとの部屋で
黒いサボテンの声に耳を澄ます
そうしていると思うんだ
この世の中に
偶然なんてないのかもしれない
あの土とこの風が
消せないストーリーを綴って
私に花びらが一枚足りなくて
黄色い模様があって
夏に残されて
だから私はこの部屋にいて
こうしている
偶然は
必然なのかもしれない
五
四枚の花びら
四ってエンギが悪いと言った
あの頃に
しま猫のおばあちあんが
しあわせの「し」だと教えてくれた
私には
花びらが一枚足りないの
みんなは五枚なんだ
でもね
戻る 編 削 Point(22)