鳴夜行 ?/木立 悟
 



ひとつの星が
ひとつかみの曇を引き連れてゆく
定まらぬ夜の噴水
戻らぬものの行方
はばたきの影


かわいた溝を雨が流れ
羽を持つものはみな飛びたち
持たぬものは淀みに廻る
緑の光 緑の水
かがやきの手に上下する


窓の水滴をひとつ吸い
階段をことりと降りる指
壁に沿って立つ波の
夜へと消える銀の摺り足
視界のすみにひらくむらさき


ひとつの曇が
ひとつかみの星を呑みこんでゆく
人の明かりも吸い寄せられて
街は虹彩 まばたきの檻
まぶしさのままにあふれ流れる


火のように在り 失われ
夜を渡り 夜になる
不定の類 不定の輩
変わりつづけるふちどりのうたを
にじみにじませ 震わせてゆく


穂の波音が肌に触れ
穂のかたちとなり消えてゆく
夜の夜に流れ重なり
持たぬもののための羽となり
去るものの跡を描きつづける











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