うばすてやま/吉田ぐんじょう
 
腰を抱いて
細い身体だな
と言う
でも
体重は祖母の方が軽い
そのくらいわたしは知っている
石鹸をあわ立て
腰をかがめたまま
祖母に抱かれたまま
段々背中が痛くなってくるのを
じっと我慢する

さびしいと言う声が聞こえる

うばすてやまについて考えている
祖母をそこへ連れてゆきたい
訳ではない
ただ考えているだけである

電気ポットの湯が沸いたので
わたしは祖母のために
お茶を入れ替えに立つ


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