うばすてやま/吉田ぐんじょう
うばすてやまについて考えている
祖母をそこへ連れてゆきたい
訳ではない
昼下がり
冷えた湯呑みが二つ
並んでいる
祖母が歩くと
割烹着のポッケットから
何かがこすれ合う音がする
祖母はいつもポッケットに
ティシューと飴を入れている
若しわたしが転んでも
血を拭いてやれるように
飴を口に含ませてやれるように
洗濯をするとき
祖母は自分の分を
皆のと一緒に洗わない
あとでこっそり洗っている
一緒に洗うのはいやだっぺ
と笑っている
そんなことないよ
とわたしは呟くが
その声は
祖母には届かないみたいだ
手を洗っていると
祖母は
わたしの腰を
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